乳糖/LACTOSE
乳糖とは
乳糖は、次の化学式で表される二糖類です。INCI名は、Lactoseです(1)。
日本薬局方には、乳糖は、「無水乳糖」$C_{12}H_{22}O_{11}$、「乳糖水和物」$C_{12}H_{22}O_{11}•H_{2}O$と別の物質として収載されています(2)。
また、医薬部外品原料規格には、「乳糖」$C_{12}H_{22}O_{11}•H_{2}O$と規定されており、局方の「乳糖水和物」と同様の化学式が示されています。ちなみに、日本化粧品工業連合会の乳糖は、「無水乳糖」$C_{12}H_{22}O_{11}$が示されています(3)。
乳糖にはαとβの異性体が存在し、旋光性を持つ物質です。
旋光度は、日本薬局方では、「無水乳糖」、「乳糖水和物」ともに、$[α]^{20}_D:+54.4 ~ +55.9°$ 、医薬部外品原料規格では、$[α]^{25}_D:+52.0~+52.6°$と規定され、測定温度と値が違います。
乳糖は、β-ガラクトースとD-グルコースがグリコシド結合しており還元性があります。
乳糖は、主に牛乳に含まれている甘味成分です。日本人には乳糖不耐という牛乳を飲むとお腹が痛くなる人が一定数いると言われていますが、乳糖を含む錠剤を乳糖不耐症の人に禁忌・原則禁忌・慎重投与になっている医薬品はありません。
しかし、最近の論文には複数の処方薬の摂取により、有害反応の出る可能性も指摘されています(4)。
また、乳糖はタンパク質を除去した成分ですが、まれにタンパク質が残っている場合があり、ミルク・アレルゲンを含んでいる化粧品の連続使用がミルク・アレルゲンでエピ皮膚増感を誘発するかもしれないことを示唆されています(5)。
乳糖は、GHS分類基準に該当しない化学物質です。標準的な大気条件(室温)で化学的に安定ですが、粉じん爆発を起こす可能性があります。また強酸化剤と激しく反応するため、離して保管する必要があります(6)。
乳糖の配合目的
化粧品分野では、賦形剤やシュガースクラブとして使用されます。
乳糖の安全性情報
https://www.cir-safety.org/sites/default/files/monsac032014FR.pdf
参考文献
(1) 化粧品の成分表示名称リスト 乳糖
(2) 第十八改正 日本薬局方 無水乳糖 乳糖水和物
(3) 医薬部外品原料規格 乳糖
(4) Inactive" ingredients in oral medications
(5) 化粧品・医薬部外品中の乳アレルゲンタンパク質の分析 日本食品化学学会誌 2014 年 21 巻 3 号 p. 155-162
(6) Safety Data Sheet for 乳糖・水和物 137045 © 2021 Merck KGaA, Darmstadt, Germany and/or its affiliates. All rights reserved.
乳糖に関する日本語の参考論文
【特集:オリゴ糖研究の最前線 その1 機能性オリゴ糖の研究】 ラクトビオン酸の機能性と生体触媒を用いた生産
村上 洋 , 大江 健一 , 西川 善弘 [他] , 木村 隆 , 桐生 高明 , 木曽 太郎 , 中野 博文 応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 1(4), 296-301, 2011
河内 明 , 北出 利勝 , 豊田 住江 , 亀井 順二 , 兵頭 正義 , 細谷 英吉 全日本鍼灸学会雑誌 32(2), 47-51, 1982
106.乳糖中の抗原物質の皮膚反応活性について(アレルゲン・抗原)
富所 隆三 , 鈴木 喜久夫 , 黒梅 恭芳 , 松村 龍雄
アレルギー 23(3), 223-224, 1974 J-STAGE 医中誌Web
乳糖に関する英語の参考論文
Piérard-Franchimont C, Castelli D, Cromphaut IV, Bertin C, Ries G, Cauwenbergh G, Piérard GE.Skin Res Technol. 1998 Nov;4(4):237-43. doi: 10.1111/j.1600-0846.1998.tb00116.x.PMID: 27332694
Inhibition and reversal of Salmonella typhimurium attachment to poultry skin using zinc chloride.
Nayak R, Kenney PB, Bissonnette GK.J Food Prot. 2001 Apr;64(4):456-61. doi: 10.4315/0362-028x-64.4.456.PMID: 11307879
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Stuck BA, Heller T.HNO. 2011 Nov;59(11):1088-92. doi: 10.1007/s00106-011-2386-9.PMID: 22012485 German.
Commercial cannabis consumer products part 1: GC-MS qualitative analysis of cannabis cannabinoids.
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Protective effect of conditioner agents on hair treated with oxidative hair dye.
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