ローヤルゼリーエキス/ROYAL JELLY EXTRACT
ローヤルゼリーエキスとは
ローヤルゼリーエキスは、成分番号:552770、INCI名:Royal Jelly Extractであり、本質はローヤルゼリーのエキスです。
日本薬局方には、「ローヤルゼリーエキス」の収載はありませんが、「ローヤルゼリー」英名:Royal Jelly、学名:APILACとして収載され、「本品はヨーロッパミツバチApis mellifera Linné又はトウヨウミツバチApis cerana Fabricius (Apidae)の頭部にある分泌腺から分泌される粘稠性のある液又はそれを乾燥したもの」と規定されています。
医薬部外品原料規格には、「ローヤルゼリーエキス」英名:Royal Jelly Extractが収載され、「本品は,セイヨウミツバチ Apis mellifera Linnaeus(Apidae)又はトウヨウミツバチ cerana Fabricius(Apidae)の頭部等にある分泌腺から分泌される物質から水,「エタノール」 「1,3-ブチレングリコール」又は,これらの混液にて抽出して得られるエキスである.」と規定されています。
ローヤルゼリーの歴史は古く、今から約2400年前、古代ギリシャの哲学者アリストテレスが記した『動物誌』には「濃厚な蜂蜜に似た淡黄色の柔らかいもの」というローヤルゼリーを示していると考えられる物質について書かれています。
ローヤルゼリーは、働きバチが花粉やはちみつを食べて分泌したものです。乳白色で酸味が強く、独特な味をしています。
働きバチも女王バチも、同じ卵から孵化しますが、女王バチは、孵化後ローヤルゼリーを生涯食べ続けます。その結果、体長が働きバチの 2 ~ 3 倍、寿命が 30 ~ 40 倍になります。
働きバチは卵を産めませんが、女王バチは、毎日約 1500 個の卵を産み続けることができます。ローヤルゼリーは、ミツバチの世界では、働きバチと同じ受精卵を体型や能力が突出した女王バチへと分化させる食事なのです。
輸入されるローヤルゼリーのうち、中国産のものが90%以上を占めますが、中国産のローヤルゼリーから2005年にテトラサイクリン系抗生物質、2006年にクロラムフェニコールが基準値以上検出され、検査命令が出されました。その後もストレプトマイシンやテトラサイクリンが検出されたため、モニタリング検査が強化されました。
ローヤルゼリーエキスの配合目的
- 角層水分量増加による保湿作用
- 皮脂腺の脂質合成低下による皮脂抑制作用
働きと用途
最近になって、ローヤルゼリー中のタンパク質が女王バチを決定する働きをすることが分かってきました。ローヤルゼリー特有のタンパク質は9種類あります。また、タンパク質を構成するのはアミノ酸ですが、ローヤルゼリーには9種類の必須アミノ酸のほか、必須ではない15種類のアミノ酸が含まれています。
また、ブドウ糖、果糖、ショ糖、オリゴ糖などの糖、ビタミンB1、ビタミンB12、葉酸、イノシトール、ビタミンB2、ナイアシン、アセチルコリン、ビタミンB6、パントテン酸、ビオチンなどのビタミン類、カリウム、リン、マグネシウム、カルシウムなどのミネラル、 デセン酸ほか特有成分を含みます。
その中でも、デセン酸(10-ハイドロキシ-δ2-デセン酸)は、女王バチ特有のフェロモンに似た物質で、ローヤルゼリーを定量する際にも標的物質となります(4)。
デセン酸には、殺菌効果が認められています。肌の清潔を保つため、にきび防止効果も期待できます。
また、ローヤルゼリーエキスには、抗酸化作用をはじめ細胞活性作用、保湿作用があります。
このため、肌の乾燥を防ぎ、しみ、小じわなどを防ぐアンチエイジングの目的で配合されています。
ハチミツをコンセプトにした製品、スキンケア化粧品、リップ製品、ハンド&ボディケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、ヘアケア製品、頭皮ケア製品、シート&マスク製品、ネイル製品など様々な製品に使用されています。
ローヤルゼリーは、水や油脂類に溶けにくく、溶け残りや沈殿などが起こりやすいので、配合には工夫が必要です(10)。
ローヤルゼリーエキスの安全性情報
ローヤルゼリーは、短期間、適切に摂取する場合、安全性が示唆されています。
妊娠中・授乳中は信頼できる十分な情報が見当たらないため、サプリメントなど濃縮物の自己判断での摂取を控える必要があります。また、アトピーや喘息患者、低血圧症患者、皮膚炎患者の摂取は、症状が悪化する可能性があるため注意が必要です(11)。
皮膚への塗布に対する安全性はまだ調べきれていません
参考文献
(1) 日本化粧品工業連合会 ブクリョウエキス 平成13年3月6日付医薬審発第163号・医薬監麻発第220号厚生労働省医薬局審査管理課長並びに同監視指導・ 麻薬対策課長通知
(2) 第十八改正日本薬局方 ブクリョウエキス
(3) 医薬部外品原料規格 ローヤルゼリーエキス
(4) ローヤルゼリーを知る | (社)全国ローヤルゼリー公正取引協議会 (rjkoutori.or.jp)
(5) ローヤルゼリーの豆知識 | (社)全国ローヤルゼリー公正取引協議会 (rjkoutori.or.jp)
(6) ローヤルゼリー、貿易量の90%超が中国産に 風評受け市場動向に懸念も (1/2ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)
(7) 輸入食品に対する検査命令の実施について (mhlw.go.jp) 平成16年11月2日 食品安全部監視安全課
(8) 輸入食品に対する検査命令の実施について(中国産ローヤルゼリー及びカンボジア産バジルシード) 平成18年2月14日食品安全部監視安全課
(9) モニタリング検査の強化について(中国産ローヤルゼリー) 医薬食品局食品安全部監視安全課 輸入食品安全対策室 事務連絡 平成18年5月19日
(10) 化粧品成分用語事典2012 - Google Books ローヤルゼリー
(11) 「健康食品」の安全性・有効性情報 (nibiohn.go.jp) © National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition. All Rights Reserved.
ローヤルゼリーエキスに関する日本語の論文情報
織部 恵莉 , 輿石 有理佳 , 立藤 智基 [他] JADS : Japan Aesthetic Dermatology Symposium 6(1), 10-14, 2013
ローヤルゼリーにより生じたアナフィラキシーの1例新谷 友香 , 峠岡 理沙 , 金久 史尚 , 益田 浩司 , 加藤 則人臨床皮膚科 = Japanese journal of clinical dermatology 75(12), 959-962, 2021-11
ローヤルゼリー加水分解物の<i>in vitro</i>における荒れ肌に対する作用
川村 美裕 , 丹羽 誠 , 正木 仁 日本化粧品技術者会誌 48(1), 28-34, 2014 J-STAGE
ローヤルゼリータンパク質アピシンのヒト由来皮膚線維芽細胞株およびマウス由来骨芽細胞様細胞株に及ぼす作用
鶴間 佳美 , 丸山 広恵 , 荒木 陽子 日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology 58(3), 121-126, 2011-03-15 J-STAGE 日本農学文献記事索引
ローヤルゼリーとアスコルビン酸2-グルコシド(AA-2G)によるハムスター皮膚線維芽細胞のコラーゲン産生増強作用
宮田 聡美 , 竹井 恭彦 , 牛尾 慎平 [他] , 岩城 完三 , 池田 雅夫 , 栗本 雅司 Natural medicines = 生薬學雜誌 56(5), 191-194, 2002-10-20 国立国会図書館デジタルコレクション 医中誌Web
ローヤルゼリーエキスに関する英語の論文情報
Lin Y, et al. BMC Complement Med Ther. 2020. PMID: 33225942 Free PMC article.
**Royal** jelly increases collagen production in rat skin after ovariectomy.
Park HM, et al. J Med Food. 2012.PMID: 22468645 Free PMC article.
Oral allergy syndrome in a child provoked by royal jelly.
Paola F, et al. Case Rep Med. 2014.PMID: 24799914 Free PMC article.
Characterization of major allergens of royal jelly Apis mellifera.
Rosmilah M, et al. Trop Biomed. 2008.PMID: 19287364 Free article.
Contribution of lipids in honeybee (Apis mellifera) royal jelly to health.
Li X, et al. J Med Food. 2013.PMID: 23351082 Review.
Koya-Miyata S, et al. Biosci Biotechnol Biochem. 2004. PMID: 15118301 Free article.
Allergic reactions to honey and royaljelly and their relationship with sensitization to compositae.
Lombardi C, et al. Allergol Immunopathol (Madr). 1998. PMID: 9934408
Traditional remedies and food supplements. A 5-year toxicological study (1991-1995).
Shaw D, et al. Drug Saf. 1997. PMID: 9391777