表示名称

登録件数: 15069 件

表示名称成分詳細

リノール酸

成分番号(JP number): 552696

INCI
LINOLEIC ACID
定義(Description)
本品は、次の化学式で表される不飽和脂肪酸である。9,12-Octadecadienoic acid (9Z, 12Z)-
日本の規制情報(Japanese regulation information)
-
中文inci(CN/中国名称)
亚油酸
中国の規制情報(Chinese regulation information)
【已使用化妆品原料目录(2021年版)】Maximum Historical Usage in Rinse-off Cosmetics(%): (none), Maximum Historical Usage in Leave-on Cosmetics(%): 11.64
韓国inci(KR/ハングル/성분명)
리놀레익애씨드
CAS No.
60-33-3(CIS)
EC No.
200-470-9(CIS)
EUの規制情報(Restriction/Annex/Ref#)
-

関連原料

原料名 表示名称 INCI

リノール酸/LINOLEIC ACID

リノール酸とは

リノール酸は、成分番号 552696、INCI名 Linoleic Acid で、次の化学式で表される不飽和脂肪酸です(1)。

医薬部外品原料規格では、「リノール酸」英名:9,12-Octadecadienoic Acid、学名:Linoleic Acidとして収載されています。

「本品は,主としてリノール酸(C18H32O2:280.45)からなる」と定義され、酸価: 197~201、ヨウ素価 168~181と規定されています。

リノール酸は、乾性油に分類され、空気中への放置や加熱によって、しだいに粘度が大きくなって固化する性質の油です。

脂質は細胞膜の主要な構成成分です。また、エネルギー産生の主要な基質にもなります。

また、炭水化物や、たんぱく質よりも、2倍以上のエネルギー価をもつので、ヒトはエネルギー蓄積のために脂質を体内に蓄積するようにできています。

脂質の中で、n‒6系脂肪酸と n‒3系脂肪酸と呼ばれるものは、体内で合成ができませんが、欠乏すると皮膚炎などが発症します。

生体内では、リノール酸をアセチルCoAから合成することができないので、経口摂取する必要があります。このため必須脂肪酸と呼ばれます。

リノール酸は、脂質のうち、n‒6系脂肪酸と分類される脂肪酸で、リノール酸のほかに、γ‒リノレン酸、アラキドン酸などがあります。γ‒リノレン酸やアラキドン酸はリノール酸の代謝産物です。

日本人が摂取する n‒6系脂肪酸の 98% はリノール酸です。

リノール酸は植物に多く存在し、大豆油、コーン油、サフラワー油などの食用調理油が主要な摂取源となっています(3)。

リノール酸の配合目的

  • メラニン形成阻害作用
  • 黄色ブドウ球菌増殖抑制作用
  • エモリエント効果

働きと用途

リノール酸には、メラニン形成を妨ぐ作用があることが検証されています。

メラニン形成防止作用に関与していると考えられるのは、以下の3つの作用です。

① プロテインキナーゼ(C-キ ナーゼ)の活性化によるメラニン産出抑制

② 活性化したメラノサイトが新たに作り出すメラニ ン色素の生成を制止する作用

③ 表皮のターンオーバーの促進作用(4)。

また、リノール酸の黄色ブドウ球菌の増殖抑制作用についても報告があります。

黄色ブドウ球菌は、傷や荒れた皮膚表面に存在し、食中毒の原因ともなる菌です。

この黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus) FDA 209Pを、一夜培養後の菌液を1.0×$10^7$cfu/mLになるように、リノール酸を80μg/ml培地に添加し、光学的に菌の増殖を測定したところ、 リノール酸に強い増殖抑制作用が認められています(5)。

リノール酸は、細胞間脂質の脂肪酸としても重要な役割を果たしています。

細胞間脂質は、セラミド、糖脂質、コレステロール、コレステロールエ ステル、遊離脂肪酸で構成されています。

角層細胞間脂質のラメラ構造が形成されるためには、セラミド、脂肪酸、コレステロールなどの脂質成分の構成比が重要で、その比率の偏りが、ラメラ構造の性状を変化させ、肌のバリア機能を損ないます。

健康な肌では、細胞間脂質はセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸が1:1:1(重量比でセラミド50%、コレステロール25%、遊離脂肪酸10%~20%)の割合で存在するのが理想的でが、n-6系脂肪酸が不足すると皮膚炎を発生することが知られています(6)。

皮膚炎をおこしている動物のセラミドの脂肪酸組成を調査すると、リノール酸のほとんどがオレイン酸に置き換わっているという実験結果もあり、リノール酸は分子レベルで皮膚を健康に保っている重要な要因であることがわかってきています(7)(8)。

上記のような目的で、化粧品には、リノール酸は、スキンケアやメイクアップ、シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど様々なものに使用されています。

参考文献

(1) 日本化粧品工業連合会 リノール酸 平成13年3月6日付医薬審発第163号・医薬監麻発第220号厚生労働省医薬局審査管理課長並びに同監視指導・ 麻薬対策課長通知

(2) 医薬部外品原料規格 リノール酸

(3) 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書 (mhlw.go.jp) Ⅱ各論 1エネルギー・栄養素 1-3脂質

(4) リノール酸のメラノジェネシスに対する抑制効果 安藤 秀哉, 橋本 晃, 政本 幸三, 市橋 正光, 三嶋 豊 日本化粧品技術者会誌 1993 年 27 巻 3 号 p. 415-423

(5) 新井 武利, 他(1996)「脂肪酸, 精製ツバキ油およびオリーブ油の黄色ブドウ球菌に対する増殖抑制作用について」日本化学療法学会雑誌(44)(10),786-791.

(6) 皮膚角質細胞間脂質の構造と機能 芋 川 玄 爾 花王基礎科学研究所 油化学 第4巻 第10号 (1995)

(7) 脂肪酸とその誘導体の香粧品における新しい応用 前田 一仁 油化学 1995 年 44 巻 4 号 p. 291-300

(8) P.W. Wertz, D.T. Downing, Science, 21, 1261( 1982 )

リノール酸の安全性情報

https://www.cir-safety.org/sites/default/files/Fatty Acids and Fatty Acid Salts.pdf

リノール酸は、人にとって必須脂肪酸となっている物質です。

生活習慣病改善との関連も示唆されますが、明確な結果は出ていません(3)。

リノール酸に関する日本語の論文情報

P2-40 皮膚バリアの重要因子超長鎖脂肪酸含有アシルセラミドの合成研究

村井 勇太 , 小川 連 , 端野 翔太 , 門出 健次 天然有機化合物討論会講演要旨集 60(0), 727-732, 2018 J-STAGE

蛍光検出を用いたヒト皮脂に含まれる過酸化脂質の高感度迅速フローインジェクション分析

化学 = Japan analyst 61(5), 397-401, 2012-05-05

J-STAGE 医中誌Web 参考文献19件

新しい抗老化化粧品原料  ゴマ発芽物中のリグナン配糖体:ゴマ発芽物中のリグナン配糖体

久野 憲康 , 土屋 欣也 , 中島 成生 日本化粧品技術者会誌 33(3), 245-253, 1999 J-STAGE

リノール酸レチノールのアンチエイジング作用 (特集 化粧品の新原料の開発動向を探る)

井筒 ゆき子 Fragrance journal 40(4), 35-37, 2012-04 医中誌Web

食餌由来コレステロール酸化物が誘発するラットの脂質代謝変動に対するワインポリフェノールとドコサヘキサエン酸高含有魚油の同時摂取効果

荻野 大和 , 山崎 晴美 , 長田 恭一 [他] , 中村 信吾 , 山谷 修 , 菅野 道廣 日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science 54(1), 19-28, 2001-02-10 J-STAGE  参考文献48件 被引用文献1件

リノール酸の自動酸化速度およびその酸化挙動への抗酸化剤の影響

孫 偉 , 塩盛 弘一郎 , 米倉 誠 [他] , 三谷 博明 , 河野 恵宣 , 幡手 泰雄 化学工学論文集 27(1), 76-84, 2001-01-20 J-STAGE  参考文献20件

皮膚美白剤としてのリポソーム化リノール酸の有用性

今中 宏真 , 安藤 秀哉 , 龍 敦子 [他] 日本化粧品技術者会誌 33(3), 277-282, 1999-09 被引用文献3件

皮膚美白剤としてのリポソーム化リノール酸の有用性

今中 宏真 , 安藤 秀哉 , 龍 敦子 , 繁田 泰民 , 岸田 聡美 , 森 綾子 , 牧野 武利 日本化粧品技術者会誌 33(3), 277-282, 1999 J-STAGE

新しい抗老化化粧品原料 ゴマ発芽物中のリグナン配糖体:ゴマ発芽物中のリグナン配糖体

久野 憲康 , 土屋 欣也 , 中島 成生

日本化粧品技術者会誌 33(3), 245-253, 1999J-STAGE

抗酸化力を有する植物抽出物のO/Wエマルジョン中での抗酸化能に与えるポリグリセリン脂肪酸エステルの効果

橋本 悟 , 栗原 浩司 , 佐藤 芳代 , 田川 正人 , 田村 幸吉 , 池田 孝夫

日本化粧品技術者会誌 32(2), 178-185, 1998J-STAGE

リノール酸の酸化速度に対する紫外線およびTiO_2の光触媒の影響

塩盛 弘一郎 , 河野 恵宣 , 馬場 由成 [他] , 三谷 博明 , 幡手 泰雄 化学工学論文集 23(5), 694-700, 1997-09-10 J-STAGE  参考文献16件

リノール酸のメラノジェネシスに対する抑制効果

安藤 秀哉 , 橋本 晃 , 政本 幸三 , 市橋 正光 , 三嶋 豊 日本化粧品技術者会誌 27(3), 415-423, 1993 J-STAGE

短期的なリノール酸の摂取がマウス皮膚性状に与える影響

及川 大地 , 宮崎 駿平 , 武藤 文恵 , 岸本 梨江 , 吉田 彩乃長崎大学教育学部紀要:自然科学 通巻 第85号(Bulletin of Faculty of Education, Nagasaki University : Natural Science, Vol.85)長崎大学教育学部紀要 = Bulletin of Faculty of Education, Nagasaki University, Combined Issue (4), 27-36, 2018-02-28機関リポジトリ

短期的なリノール酸の摂取がマウス皮膚性状に与える影響

及川 大地 , 宮崎 駿平 , 武藤 文恵 , 岸本 梨江 , 吉田 彩乃 長崎大学教育学部紀要 = Bulletin of Faculty of Education, Nagasaki University 4, 27-36, 2018-02

P2-40 皮膚バリアの重要因子超長鎖脂肪酸含有アシルセラミドの合成研究

村井 勇太 , 小川 連 , 端野 翔太 , 門出 健次 天然有機化合物討論会講演要旨集 60(0), 727-732, 2018 J-STAGE

P-1-C31 成分栄養剤による必須脂肪酸欠乏症による皮膚障害例

井上 絢香 , 本橋 裕子 , 石山 昭彦 , 竹下 絵里 , 斎藤 貴志 , 小牧 宏文 , 中川 栄二 , 須貝 研司 , 佐々木 征行 日本重症心身障害学会誌 43(2), 356-356, 2018 J-STAGE  医中誌Web

共役リノール酸の摂取が脂質代謝に与える影響

及川 大地 , 岸本 梨江 , 谷口 由夏 , 本村 菜摘 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 67(0), 162, 2015 J-STAGE

リノール酸摂取がマウス皮膚の脂質代謝に及ぼす影響

及川 大地 , 間ノ瀬 晶子 , 中尾 侑 , 吉田 綾乃

一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 64(0), 147, 2012J-STAGE

リノール酸配合美白剤のアトピー性皮膚炎患者を対象とした安全性の検討 内 小保理 , 師井 美樹 , 中村 賢二郎 [他] , 古江 増隆 西日本皮膚科 73(4), 408-411, 2011 J-STAGE  医中誌Web

実験的アレルギー性皮膚炎における痒みに関する研究(第12報)ドライスキンの発症におけるリノール酸の関与

友澤 潤子 , 藤井 正徳 , 水谷 暢明 , 奈邉 健 , 段野 貴一郎 , 河野 茂勝 アレルギー 52(2-3), 361, 2003 J-STAGE  医中誌Web

皮膚美白剤としてのリポソーム化リノール酸の有用性

今中 宏真 , 安藤 秀哉 , 龍 敦子 [他]日本化粧品技術者会誌 33(3), 277-282, 1999-09

皮膚美白剤としてのリポソーム化リノール酸の有用性 今中 宏真 , 安藤 秀哉 , 龍 敦子 , 繁田 泰民 , 岸田 聡美 , 森 綾子 , 牧野 武利 日本化粧品技術者会誌 33(3), 277-282, 1999 J-STAGE

リノール酸配合外用剤の肝斑に対する臨床効果

西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology 60(4), 537-542, 1998-08-01J-STAGE 医中誌Web

HLAからみたアトピー性皮膚炎発症因子としてのIgEならびにリノール酸代謝の評価 武藤 正彦 , 一宮 誠 , 森脇 由紀 , 三松 和美 , 麻上 千鳥 日本小児皮膚科学会雑誌 = Journal of pediatric dermatology 15(2), 95-98, 1996-11-15 医中誌Web

リノ-ル酸過酸化物の皮膚障害とその防止

田中 隆義 名古屋医学 101(3・4), p171-181, 1979-03 医中誌Web

リノール酸に関する英語の論文情報

Vegetable butters and oils in skinwound healing: Scientific evidence for new opportunities in dermatology.

Poljšak N, et al. Phytother Res. 2020.PMID: 31657094

Healing fats of the skin: the structural and immunologic roles of the omega-6 and omega-3 fatty acids.

McCusker MM, et al. Clin Dermatol. 2010.PMID: 20620762

Role of linoleic acid in arsenical palmar keratosis.

Ahmed TS, et al. Int J Dermatol. 2016.PMID: 26235890

Natural (Mineral, Vegetable, Coconut, Essential) Oils and Contact Dermatitis.

Verallo-Rowell VM, et al. Curr Allergy Asthma Rep. 2016. PMID: 27373890 Review

alpha-Linolenic acid and linoleicacid modulate the lipidome and the skin barrier of a tissue-engineered skin model.

Simard M, et al. Acta Biomater. 2021.PMID: 34808417

Linoleate-enriched diet increases both linoleic acid esterified to omega hydroxy very long chain fatty acids and free ceramides of canine stratum corneum without effect on protein-bound ceramides and skinbarrier function.

Popa I, et al. Arch Dermatol Res. 2018.PMID: 29995261

**Linoleic** acid-rich guava seed oil: Safety and bioactivity.

Prommaban A, et al. Phytother Res. 2019.PMID: 31328343

Oral supplements in atopic dermatitis.

Fenner J, et al. Clin Dermatol. 2018.PMID: 30217278

**Linoleic** acid and alpha-linolenic acid lightens ultraviolet-induced hyperpigmentation of the skin.

Ando H, et al. Arch Dermatol Res. 1998.PMID: 9749992

The edible skincare diet.

DeWeerdt S. Nature. 2018. PMID: 30464285No abstract available.

Higher Accumulation of Docosahexaenoic Acid in the Vermilion of the Human Lip than in the Skin.

Mamun MA, et al. Int J Mol Sci. 2020.PMID: 32316553

Modification of skin composition by conjugated linoleic acid alone or with combination of other fatty acids in mice.

Oikawa D, et al. Br J Nutr. 2005.PMID: 16115363

Conversion of linoleic acid and arachidonic acid by skin epidermal lipoxygenases.

Nugteren DH, et al. Biochim Biophys Acta. 1987. PMID: 3113487

Hydroxy-epoxide and keto-epoxide derivatives of linoleic acid activate trigeminal neurons.

Doolen S, et al. Neurobiol Pain. 2020.PMID: 32478201

注意事項

本サイトの情報について:
公開部分については一般の方向け、業界の方向けに情報発信しております。 非公開部分に関しては、業界の方向けで各原料企業様の承認を得た方のみに公開しております。 情報の正確性については正確なように努めますが、サービスの特性上、常に最新情報ではなく、 人による作成、チェックをしており間違いもございますので、 何かございましたら問い合わせよりご連絡頂ければと思います。随時編集、変更を加えます。
安全性や効果効能の情報について:
成分名による安全性や効果効能については、表記の成分表示によって決まるものではなく、 原料や処方によって変わります。成分表示=原料ではありません。各原料会社様によって原料が違い、 規格が違います。化粧品への配合のされ方や配合されている濃度によっても大きく変わります。 あくまで参考情報程度でご理解ください。
最新情報は必ず公式かつ公的な機関より情報を得るように心がけてください。 弊社サイトの情報を活用して、情報発信、商品開発やサービスなどのあらゆるトラブルが起きても弊社では一切責任は負いかねます。
引用/最新情報(Quote and Rates information)
  • Japan Cosmetic Industry Association(https://www.jcia.org/user/business/ingredients/namelist)
  • MHLW(化粧品基準, https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/keshouhin-standard.pdf)
  • 化粧品に配合可能な医薬品の成分について(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb3437&dataType=1&pageNo=1)
  • NMPA(已使用化妆品原料目录(2021), https://www.nmpa.gov.cn/directory/web/nmpa/xxgk/ggtg/qtggtg/20210430162707173.html)
  • JETRO(添付書類二 化粧品への使用制限成分リスト, https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07000822/attachment2.pdf)
  • The European council(https://ec.europa.eu)
  • Korea cosmetic association(https://kcia.or.kr/cid/main)
Recommended sites